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●新型ROV(水中テレビロボット)の導入「漁場開発部:松尾」
1.はじめに
 当センターは2009年3月に新しいROVを導入しました。ご存知の方も多いと思いますが、ROVはRemotely Operated Vehicleの略で水中テレビロボットなどと訳され、遠隔操縦により水中を自在に動き、搭載したテレビカメラで海底の状況や海中の構造物などを撮影します。この度導入した新しいROVは、これまで使用していたものよりも、推進力がアップし、潜降深度が深く、また、第二カメラとしてデジタルHDビデオカメラレコーダを搭載しています。これにより、これまでは調査ができなかった速い潮流のときや深い水深帯でのハイビジョン撮影が可能になりました。より精度と質の高い情報提供を目指したいと考えています。

2.新型ROVの主な機能
(1)推進力
 ROVは3台の水平スラスタで前進します。また、潜降もこのスラスタを使用して、機首を下げて急降下潜降(トリムコントロール潜降)します。静水では最大4ktで進行し、最大速度はこれまでより1kt速くなりました。これにより、これまでは急潮により潜降できず調査を断念せざるを得なかったケースも強力な推進力で潜降し、目的とするものの撮影が可能になりました。

(2)潜降深度
 最大使用深度は200mです。これまでのROVの使用水深(150m)よりも50m深い水深帯での調査が可能になりました。ビークルは船上のコントロールシステムとケーブルで繋がり、ケーブルを介して電力の供給やデータの送受信を行います。使用するケーブルは全長300mです。

(3)ハイビジョンカメラ
 この新型機にはメーカーと協議を重ねて、デジタルHDビデオカメラレコーダを第二カメラとして取り付けました。ROV内臓の第一カメラの有効画素数は、これまでと同様の約38万画素ですが、第二カメラは約381万画素で鮮明な動画とともに精緻な静止画の撮影と記録が可能になりました。

                               

 

 

 








3.おわりに
 新型ROVの試運転は、2009年4月22日に長崎県長崎市野母崎町沖合で実施しました。撮影対象に選んだ魚礁は平成13年度に設置された沈船魚礁で、水深約45mの砂地に設置されています。魚礁蝟集魚はイシダイ、ネンブツダイ、コロダイ、カワハギ、イラ、ゲンロクダイなどが観察されました。試運転で撮影したデジタルHDビデオカメラの画像はこれまでよりも鮮明で、これからの調査に役立つことを確認しました。漁場造成や魚礁効果等に関する調査に十分対応できると考えますので、何かお役に立てることがありましたら、気軽にご相談いただければ幸いです。
















操縦用カメラの撮影画像(動画から書き出した静止画)。写真右上にコロダイが写っているが画像は不明瞭。
ROVの投入。
海面を進行するROV。
左と同じ位置からのHDカメラの撮影画像。コロダイの魚影が鮮明にみえる。(左のカメラと画角が異なるため撮影範囲は異なる)
新型ビークル:前方にHDカメラボックスを装着。
○新型ROVの主な機能